人間は判断力の欠如によって結婚し,忍耐力の欠如によって離婚し,記憶力の欠如によって再婚する。これはフランスの劇作家サラクルーの名言だそうです。すべての人にこれが当てはまるのかは分かりませんし,そもそも結婚をリスクと捉える考え方自体がナンセンスだと思われる人もいるでしょう。そこはひとまず置いておくとしても,人生には様々なリスクがつきものであることは疑いありません。ところが,残念ながら,人は錯覚に陥りやすいのです。例えば,人には自分に悪いことが起こる確率を低く見積もり,他方でよいことが起こる確率を過大に見積もる傾向,つまり楽観性の錯覚のようなものがあり,それを含む色々な錯覚が原因で,合理的な判断ができていないことが多いのです。ですから,人生の重要局面においてリスクを最小化するためには,楽観性の錯誤を含む色々な錯誤に陥っていないのかどうかを吟味する姿勢が必要となります。
私は,法的トラブルが発生した場合でも同様であると思います。心理学的な知識がなければ,そもそも錯覚の存在に気づくことすらありませんし,また,仮にその存在を知っていたとしても,法的トラブルの最中という平時ではない状況に陥ってしまうと,余裕がなくなり,本人が適切に判断することは難しいと思われます。専門家に頼らず自分だけで解決しようとした結果,トラブルが長引く,あるいは中途半端な形で終わり,再度トラブルになるというケースも珍しくありません。確かに,専門家に相談・依頼すると,費用がかかります。しかし,限りある人生です。そうであれば,ある程度の費用はかかっても,専門家に任せて法的トラブルに関わる時間を極力減らし,その時間を別のことに使う。その方がきっと充実した人生になる,と私は思います。
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