例えば,自信たっぷりに「この人が犯人です」という人がいれば,たいていの人は,その人が犯人なのかと思ってしまうのではないでしょうか。「自信があるのだから,それは記憶が正確であることの裏返しではないのか」,私も心理学を学び始めるまでは,そのように考えていました。
しかし,心理学では,自信が記憶の正確性が担保するとは考えられていないようです。確かに,本人が意識しようがしまいが,時間とともに忘却することは避けられません。また,時間がそれほど経過していないとしても,そもそも,人の覚え方は,機械のようにありのまま記録するというものでもありません。しかも,誤った事後の情報によって記憶が歪められることもあるのに,本人はそのことに気づくことすらできません。
弁護士としては事件の方針を決める際に立証の見通しを考慮する必要があります。人の記憶は当てにならない,これを前提にして慎重に判断していきたいです。
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